まるまるじゅう |
○○獣 |
冒頭文
眠られぬ少年 深夜の大東京! まん中から半分ほど欠けた月が、深夜の大空にかかっていた。 いま大東京の建物はその青白い光に照されて、墓場(はかば)のように睡っている。地球がだんだん冷えかかってきたようで、心細い気のする或る秋の夜のことだった。その月が、丁度(ちょうど)宿(やど)っている一つの窓があった。その窓は、五階建ての、ネオンの看板の消えている、銀座裏の、とある古い
文字遣い
新字新仮名
初出
「ラヂオ子供のテキスト」日本放送出版協会、1937(昭和12)年9月
底本
- 海野十三全集 第5巻 浮かぶ飛行島
- 三一書房
- 1989(平成元)年4月15日