げんかくさんぼう
玄鶴山房

冒頭文

一 ………それは小ぢんまりと出来上った、奥床しい門構えの家だった。尤(もっと)もこの界隈(かいわい)にはこう云う家も珍しくはなかった。が、「玄鶴山房(げんかくさんぼう)」の額や塀越しに見える庭木などはどの家よりも数奇(すき)を凝らしていた。 この家の主人、堀越玄鶴は画家としても多少は知られていた。しかし資産を作ったのはゴム印の特許を受けた為だった。或はゴム印の特許を受けてから地

文字遣い

新字新仮名

初出

「中央公論」1927(昭和2)年1、2月

底本

  • 昭和文学全集 第1巻
  • 小学館
  • 1987(昭和62)年5月1日