げかしつ
外科室

冒頭文

上 実は好奇心のゆえに、しかれども予は予が画師(えし)たるを利器として、ともかくも口実を設けつつ、予と兄弟もただならざる医学士高峰をしいて、某(それ)の日東京府下の一(ある)病院において、渠(かれ)が刀(とう)を下すべき、貴船(きふね)伯爵夫人の手術をば予をして見せしむることを余儀なくしたり。 その日午前九時過ぐるころ家を出(い)でて病院に腕車(わんしゃ)を飛ばしつ。直ちに外科

文字遣い

新字新仮名

初出

「文芸倶楽部」1895(明治28)年6月

底本

  • 高野聖
  • 角川文庫、角川書店
  • 1971(昭和46)年4月20日改版初版