おもいだすかずかず |
思い出すかずかず |
冒頭文
十一月の中旬に、学友会の雑誌が出る。何か書いたものを送るようにと云う手紙を戴いた。内容は、近頃の自分の生活に就て書いたものでもよいし、又は、旅行記のようなものでもよいと、大変寛大に視野を拡げて与えられた。けれども、こうしてペンをとり、紙に向って見ると、自分の気持は、真直「誠之」という名に執着して行って、どうも他の題目が自然に心に受取られないのを知った。学校を出てから、考えて見ると、もう足掛十年にな
文字遣い
新字新仮名
初出
「学友会雑誌」27号、誠之小学校、1921(大正10)年12月15日発行
底本
- 宮本百合子全集 第十七巻
- 新日本出版社
- 1981(昭和56)年3月20日