にゅうがくしけんぜんご
入学試験前後

冒頭文

さほど長くない学生生活の間で、特に印象ふかかったことと云って何があるだろう。 女学校におれば、ちょうど十三四から人生を感じ始める十八九までの数年を過すのだから、善かれ悪しかれ、個人として思い出すことごとが、決してないというのではない。それらを書こうとすると、事件や感じがあまり自分だけのことであったり、罪ない思い出話以上のものになるおそれがある。さような点をさけ一体に見渡した時、何といって

文字遣い

新字新仮名

初出

「婦人界」1922(大正11)年3月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十七巻
  • 新日本出版社
  • 1981(昭和56)年3月20日