そのひとらしいひとがすき
その人らしい人が好き

冒頭文

美とか、醜とかいうことは一様には云われません。美しいと思うのは容姿美ということより、その人から受ける感じに依って云われるものだと思います。 私は何よりも凡ての感じから観て「その人らしい」という人がいいと思います。たいして美人でなくとも、さっぱりとした感じの人が綺麗に見えます。外から塗りつけたような技巧の上の美よりも、自然に現れた個性美と云うものの方が、どんなにか美しく思われます。私はその

文字遣い

新字新仮名

初出

「婦人界」1922(大正11)年4月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十七巻
  • 新日本出版社
  • 1981(昭和56)年3月20日