くのさんのし
久野さんの死

冒頭文

最近私の心を大きく搏ったことは久野久子さんの死です。わたしは小さい頃あの方から三年程ピアノを教えて頂いたことがあるものですからね。先生として、芸術家として、そしてまた女として考えさせられることがいろいろあったの。 それに就てではないけれど、私、女と情熱ということを思うのよ、つまり女はどうかすると情熱のために負かされはしないかと。情熱は女を生かし、みちびき、何物かを創造する力となるけれど、

文字遣い

新字新仮名

初出

「東京日日新聞」1925(大正14)年5月8日号

底本

  • 宮本百合子全集 第十七巻
  • 新日本出版社
  • 1981(昭和56)年3月20日