このなつ
この夏

冒頭文

これから書こうとするのは、筋も何もない漫筆だ。今日など、東京へ帰って見ると、なかなか暑い。いろいろ気むずかしいことなど書きたくない。それゆえ、これを読んで下さるかもしれぬ数多い方々の中に、私の親しい友達の一人二人を数えこみ、手紙のように、喋くるように楽なものを書きたい。若しそれが一寸でも面白ければ幸です。 先々月、六月の下旬、祖母の埋骨式に、田舎へいっていた。長年いきなれた田舎だが、そこ

文字遣い

新字新仮名

初出

「週刊朝日」1925(大正14)年10月1日秋季特別号

底本

  • 宮本百合子全集 第十七巻
  • 新日本出版社
  • 1981(昭和56)年3月20日