そらのび |
空の美 |
冒頭文
空の美しさという場合、大抵広々とした空、晴やかな空などという。 郊外に住むようになってから、私は更に種類の異う空の美があることを知った。それは、大都会の上の空——大都会のペーヴメントに立って仰ぐ空の美しさだ。空はそこでは、ただのん気に広々としてはいない。高い建物、広告塔、アンテナ、其等の錯綜した線に切断され、三角の空、ゆがんだ六角の空、悲しい布の切端のような空がある。 屋根と屋
文字遣い
新字新仮名
初出
「国民新聞」1926(大正15)年8月4日号
底本
- 宮本百合子全集 第十七巻
- 新日本出版社
- 1981(昭和56)年3月20日