れんげず |
蓮花図 |
冒頭文
志賀直哉氏編、座右宝の中に、除熙の作と伝えられている蓮花図がある。蓮池に白鷺が遊んでいるところを描いたものだが、花をつけた蓮に比べて白鷺が大変小さいように描いてある。いかにも大きく古き蓮池に霊のような白鷺の遊ぶ趣が幽婉に捕えられている。蓮花の茎が入り乱れて抽(ぬきん)でている下に鷺を配したところも凡手でなく、一種重厚な、美を貫く生の凄さに似たものさえ、その時代のついた画面から漂って来るのだ。
文字遣い
新字新仮名
初出
「アサヒグラフ」1927(昭和2)年9月7日号
底本
- 宮本百合子全集 第十七巻
- 新日本出版社
- 1981(昭和56)年3月20日