「しょじょさく」よりまえのしょじょさく
「処女作」より前の処女作

冒頭文

どんな作家でも、はじめて作品が雑誌なら雑誌に発表されたという意味での処女作のほかに、ほんとの処女作というのもおかしいが誰にもよまれず、永年のうちには書いた自分自身さえそのことは忘れてしまっているというような処女作がきっとあるだろうと思う。 自分の公認処女作は「貧しき人々の群」というので大正五年に『中央公論』に発表された。 福島の田舎におばあさんが独りで暮していた。小学校の一年ぐ

文字遣い

新字新仮名

初出

「若草」1931(昭和6)年9月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十七巻
  • 新日本出版社
  • 1981(昭和56)年3月20日