ぎょうしゃとびじゅつかのかくせいをうながす
業者と美術家の覚醒を促す

冒頭文

最近豪華版とか、限定版とか称する書籍を見る。少い部数で、一々本の番号を付し、非常に立派な装幀で、一見洵(まこと)に豪華なものである。限られた少数の富裕な見手を目当てにしたものだろう。私達から見れば此上なく意味のないもので、読んで見て魂消る場合が屡々ある。内容と形式とが全然一致しないのである。何々文庫と称する十銭二十銭のものにどれだけ劣るか分らない。 見た眼がいいものを——という気持の出版

文字遣い

新字新仮名

初出

「都新聞」1936(昭和11)年6月9日号

底本

  • 宮本百合子全集 第十七巻
  • 新日本出版社
  • 1981(昭和56)年3月20日