あめのこやみ
雨の小やみ

冒頭文

六月某日。 芸術院に谷崎潤一郎が入るようになったとか、ことわったとかいう記事が出ている。それを読むと、谷崎潤一郎がつむじを曲げているのは、芸術院そのものの性質が気にそまなくて冠を曲げているのではなく、電報一つで交渉されたのでは受けかねる。受けられるようにして話しをもって来てくれと云っている。この態度はともかく日本の文学的大家としてなかなか注目に価する。ごねかたが本質においてばくちうちの親

文字遣い

新字新仮名

初出

「輝ク」1937(昭和12)年7月17日号

底本

  • 宮本百合子全集 第十七巻
  • 新日本出版社
  • 1981(昭和56)年3月20日