にたひと
似たひと

冒頭文

お茶をいれている私のそばである友達が栗の皮をむきながら、 「あなた、染物屋の横にあるお風呂へよく行くの」 ときいた。 「行かないわ」 「ほんと? じゃどうしたんだろう、始終あすこで見かけるって云っていた人があってよ」 ふき出しながら、私は、 「お気の毒だわ、間違えられた人——」 と云った。 「こんな、ちょうろぎのようなの、やっぱりあるのかしら……」 それから程もな

文字遣い

新字新仮名

初出

「婦人公論」1937(昭和12)年11月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十七巻
  • 新日本出版社
  • 1981(昭和56)年3月20日