このしょとう |
この初冬 |
冒頭文
鏡 父かたの祖母は晩年の僅かをのぞいて、生涯の大半は田舎住居で過ごしたひとであった。よく働いた人であった。何番目かの子供を生んで、まだ余り肥だたないうちに昔の米沢のどういう季節の関係だったのか、菜をどっさりゆで上げなければならないことがあった。大釜にクラクラ湯を煮立てて、洗った菜を入れては上げ、またあとからと入れながら、竈の火をいじっているうちに段々顔が火照って来て、かあっと眼のなかで燃え立
文字遣い
新字新仮名
初出
「中外商業新報」1939(昭和14)年12月2、3、5日号
底本
- 宮本百合子全集 第十七巻
- 新日本出版社
- 1981(昭和56)年3月20日