かおをかたる
顔を語る

冒頭文

どんなひとでも、はたからは、その人に似た人というものの話をきかされているだろうと思う。よく知っている者が、その似たというところの話されているのをきくと、案外、まるで似てもいないのに、とびっくりするようなこともある。私たちが互にひとの顔だちなどのどんな特徴をどうつかんでいるのかということは、一応はっきりしていそうでなかなかはっきり定(きま)ってしまえないものなのでもあろう。顔だちと、顔つきとは実に、

文字遣い

新字新仮名

初出

「スタイル」1941(昭和16)年6月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十七巻
  • 新日本出版社
  • 1981(昭和56)年3月20日