けっしゅう
結集

冒頭文

これまで私たちは云いたいことを云えなかったし、聞きたい話もきかれなかった。この頃になって、ぼつりぼつりと印象の深い話が耳に入るようになって来た。東京の郊外に武蔵野の雑木林にかこまれた、一つの女子専門学校がある。英語を専門に教える学校である。 戦争がはじまって暫くすると、そこへ軍隊が駐屯して来た。静かな欅の梢の間に、ラッパの音が響き、銃剣が閃くようになった。学校の女生徒たちは、学徒動員で働

文字遣い

新字新仮名

初出

「津田塾大学新聞」1946(昭和21)年4月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十七巻
  • 新日本出版社
  • 1981(昭和56)年3月20日