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冒頭文

帝銀事件として、帝国銀行椎名町支店におこった全行員から小使一家までの毒殺事件は、意味のわからないほど惨酷な毒殺方法で、すべての人の心を寒くした。犯人の目星がついた、つかないと、推理小説家まで動員されてのさわぎのうちに、日は一日と過ぎている。人の噂も七十五日、という日本らしい健忘症のうちに消しさられないことを切望する。 この帝銀事件が、わたしたちに教えていることは極めて意味がふかい。人間を

文字遣い

新字新仮名

初出

「サン・ニュース」1948(昭和23)年5月10日号

底本

  • 宮本百合子全集 第十七巻
  • 新日本出版社
  • 1981(昭和56)年3月20日