こまちのしゃくやく
小町の芍薬

冒頭文

根はかち〳〵の石のやうに朽ち固つてゐながら幹からは新枝を出し、食べたいやうな柔かい切れ込みのある葉は萌黄色のへりにうす紅をさしてゐた。 枝さきに一ぱいに蕾(つぼみ)をつけてゐる中に、半開から八分咲きの輪も混つてゐた。その花は媚びた唇のやうな紫がかつた赤い色をしてゐた。一歩誤れば嫉妬の赤黒い血に溶け滴りさうな濃艶なところで危く八重咲きの乱れ咲きに咲き止まつてゐた。 牡丹の大株にも

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 花の名随筆6 六月の花
  • 作品社
  • 1999(平成11)年5月10日