にせさつじけん |
贋紙幣事件 |
冒頭文
一 稀(たま)に田舎に来ると実に好(い)いなあと思う。東京なんかに住まないで、こう云う田舎に住んで見たいなあと思う。空気が澄んでいるから空の色が綺麗(きれい)で、林があって、野原があって、牧場があって、静かでのんびりしていて本当に好い。東京からそう遠くない所にこんな好い所があるんだもの、日曜には活動なんか見に行かないで、空気の好い広々とした田舎へ来る方が、どんなに気持が好いか知れやしない。
文字遣い
新字新仮名
初出
「少年倶楽部」1930(昭和5)年8月
底本
- 少年小説大系 第7巻 少年探偵小説集
- 三一書房
- 1986(昭和61)年6月30日