あとがき(『あさのかぜ』) |
あとがき(『朝の風』) |
冒頭文
この短篇集は私にとってもすこし風変りな集となった。一番はじめの「朝の風」は極く最近のものだけれど、次の「牡丹」以下の作品はずっと昭和の初めごろまでさかのぼっていて「小祝の一家」に到る間に多くの年月がこもっている。 これまでに出版された本のなかへは入れていなかった作品をも今度はあつめておく心持になった。見ようによっては一つの年輪がここにあるとも云える。一本の樹木も成長してゆく過程には、越し
文字遣い
新字新仮名
初出
「朝の風」河出書房、1940(昭和15)年11月
底本
- 宮本百合子全集 第十八巻
- 新日本出版社
- 1981(昭和56)年5月30日