われらのいえ |
われらの家 |
冒頭文
午後六時 窓硝子を透して、戸外の柔かい瑠璃色の夕空が見える。 朝は思いがけなく雪が降って、寒い日であった。 泰子は、チロチロと焔の揺れる、暖かい食堂のストーブの傍のディブァンに坐って、部屋の有様を眺めて居た。 中央の長卓子(テーブル)の処には、母親を中央に置いて弟と妹とが何か頻りに喋って居る。 「ね、おかあさま、酷いのよ。新らしい、ちゃんと作ってある畑
文字遣い
新字新仮名
初出
「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年5月30日
底本
- 宮本百合子全集 第十八巻
- 新日本出版社
- 1981(昭和56)年5月30日