しょか(せんきゅうひゃくにじゅうにねん) |
初夏(一九二二年) |
冒頭文
六月一日 私は 精神のローファー 定った家もなく 繋がれた杭もなく 心のままに、街から街へ 小路から 小路へと 霊の王国を彷徨(さまよ)う。 或人のように 私は古典のみには安らえない。 又、或人のように、 眼の眩めくキュービズムにも。 ダダも 面白かろう、 然しそれとても、 私には 折にふれ 行きすぎ 心を掠める 一筋の町の景色だ。 けれども、私がローファーなのは 決し
文字遣い
新字新仮名
初出
「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年5月30日
底本
- 宮本百合子全集 第十八巻
- 新日本出版社
- 1981(昭和56)年5月30日