よろく(せんきゅうひゃくにじゅうよねんより)
余録(一九二四年より)

冒頭文

余録 菅公を讒言して太宰の権帥にした、基経の大臣(おとど)の太郎、左大臣時平は、悪逆無道の大男のように思われて居る。 小学歴史で読んだ時から、清くやせた菅原道真に対して、グロテスクな四十男が想像されて居た。ところが、実際はそうでなかったらしい。寧ろひどく偏狭な、神経質な、左大臣の官服の下に猿のような体のあることを想わせる男ではなかったた。小さく窪んだ二つの眼を賤しく左右に配って、せ

文字遣い

新字新仮名

初出

「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年5月30日

底本

  • 宮本百合子全集 第十八巻
  • 新日本出版社
  • 1981(昭和56)年5月30日