母親がランプを消して出て来るのを、子供達は父親や祖母と共に、戸外で待っていた。 誰一人の見送りとてない出発であった。最後の夕餉(ゆうげ)をしたためた食器。最後の時間まで照していたランプ。それらは、それらをもらった八百屋(やおや)が取りに来る明日の朝まで、空家の中に残されている。 灯が消えた。くらやみを背負って母親が出て来た。五人の幼い子供達。父母。祖母。——賑(にぎや)かな、し