かいがらついほう 011 こうしょびだん |
貝殻追放 011 購書美談 |
冒頭文
吾々の時代の多過ぎる程多數の作家の中で、古典として尊重せらるべき作品を後世に殘す人が幾人あるかを想ふ度に、自分は自分自身をも含ませてなさけ無い心持になるのを禁じる事が出來無い。 十數年前、文藝上の新しい主義が海外から移入された頃、その主義宣傳の運動に携はつた者は、政黨政派の爭のやうに黨同伐異を事としたが、年月がたつて彌次馬に特有の興奮状態から覺醒した時、初めて彼等は自分達の値うちを意識し
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「三田文學」1918(大正7)年8月号
底本
- 水上瀧太郎全集 九卷
- 岩波書店
- 1940(昭和15)年12月15日