シュリーマンふじんをおもう
シュリーマン夫人を憶ふ

冒頭文

一 トロイ、チリンス、ミケーネの發掘者、エーゲ文明復活の先驅、ハインリヒ・シュリーマン博士の歿後四十年、此の永久に記憶せらる可き考古學者の未亡人として、またアゼンスの交際社會の女王として「イリウー・メラトロン」の大主婦として、活躍せられてゐたソフイヤ夫人の訃が忽然として昨年十月二十七日を以て世界に傳へられたのは、我々をして洵に一入淋しさを感ぜしめる。斯くして偉大なりし十九世紀の人物の面影と其

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「ドルメン」1933(昭和8)年3月

底本

  • 青陵随筆
  • 座右寶刊行會
  • 1947(昭和22)年11月20日