なまりをかじるむし
鉛をかじる虫

冒頭文

近頃鉄道大臣官房研究所を見学する機会を得て、始めてこの大きなインスチチュートの内部の様子をかなり詳しく知ることが出来た。名前だけ聞いたところではたいそういかめしいお役所のような気がして、書類の山の中で事務や手続きや規則の研究をしている所かと想像していたのであるが、事実はまるで反対で、それは立派な応用科学研究所であって多数の実験室にはそれぞれ有為な学者が居て色々有益で興味のある研究をしているのであっ

文字遣い

新字新仮名

初出

「帝国大学新聞」1933(昭和8)年1月

底本

  • 寺田寅彦全集 第二巻
  • 岩波書店
  • 1997(平成9)年1月9日