こころもちについて
心持について

冒頭文

或瞬間(思い出) 正午のサイレンが鳴ってよほど経つ   少し空腹 工事場でのこぎりの音   せわしい技巧的ななめらかな小鳥のさえずり、いかにも籠の小鳥らしい美しさで鳴く とつぜん ガランガランと   豆屋のベルの音がした。 そして私は思い出した。刑務所の さむい朝と 夜とを、   主として夜を その音が どっか遠くで順々にきこえ いつも最後に女舎で

文字遣い

新字新仮名

初出

「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年5月30日

底本

  • 宮本百合子全集 第十八巻
  • 新日本出版社
  • 1981(昭和56)年5月30日