ひとわれをこうしきしゅぎしゃとよぶ
ひと吾を公式主義者と呼ぶ

冒頭文

東大数学科の教授である竹内端三博士は私にとって一種の恩師である。先生が八高から一高の教授に転任して来て最初に数学を受け持ったクラスの一つが、私のクラスであった。私は先生に微積分のごく初歩をならった。私は宿題が当って黒板に出て問題を解くという教育にあまり賛成でなかった生徒の代表的な一人であったので、適当に出欠を調節することに専ら数学的才能を傾倒したのであるが、或る時この計算を誤って遂に黒板の前に立た

文字遣い

新字新仮名

初出

「中央公論」1937(昭和12)年8月号

底本

  • 戸坂潤全集 第一巻
  • 勁草書房
  • 1966(昭和41)年5月25日