こはる |
小春 |
冒頭文
⦅一⦆ 十一月某日(それのひ)、自分は朝から書斎にこもって書見をしていた。その書はウォーズウォルス詩集である、この詩集一冊は自分に取りて容易ならぬ関係があるので。これを手に入れたはすでに八年前のこと、忘れもせぬ九月二十一日の夜(よ)であった。ああ八年の歳月! 憶(おも)えば夢のようである。 ことにこの一、二年はこの詩集すら、わずかに二、三十巻しかないわが蔵書中にあってもはなはだしく冷遇
文字遣い
新字新仮名
初出
「中学世界」1900(明治33)年12月
底本
- 武蔵野
- 岩波文庫、岩波書店
- 1939(昭和14)年2月15日、1972(昭和47)年8月16日改版