しょうわにねんのにかかいとびじゅついん
昭和二年の二科会と美術院

冒頭文

二科会(カタログ順) 有島生馬(ありしまいくま)氏。 この人の色彩が私にはあまり愉快でない。いつも色と色とがけんかをしているようで不安を感じさせられる。ことしの絵も同様である。生得の柔和な人が故意に強がっているようなわざとらしさを感じる。それかと言ってルノアルふうの風景小品にもルノアルの甘みは出ていない。無気味さがある。少し色けを殺すとこの人の美しい素質が輝いて来ると思う。 ビッシエール。 こ

文字遣い

新字新仮名

初出

「霊山美術」1927(昭和2)年11月

底本

  • 寺田寅彦全集 第四巻
  • 岩波書店
  • 1961(昭和36)年1月7日