ひとのことば――じぶんのことば
人の言葉――自分の言葉

冒頭文

一 「おおかた古(いにしえ)を考うる事、さらに一人二人の力もてことごとく明らめ尽くすべくもあらず。またよき人の説ならんからに多くの中には誤りもなどかなからん。必ずわろき事もまじらではえあらず。そのおのが心には、今は古の心ことごとく明らかなり、これをおきてはあるべくもあらずと思い定めたることも、思いのほかにまた人の異なるよき考えもいで来るわざなり。あまたの手を経るまにまに、さきざきの考えの上をなお

文字遣い

新字新仮名

初出

「理学部会誌」1927(昭和2)年12月

底本

  • 寺田寅彦全集 第四巻
  • 岩波書店
  • 1961(昭和36)年1月7日