だんぺん(に)
断片(Ⅱ)

冒頭文

一 連句で附句(つけく)をする妙趣は自己を捨てて自己を活かし他を活かす事にあると思う。前句の世界へすっかり身を沈めてその底から何物かを握(つか)んで浮上がって来るとそこに自分自身の世界が開けている。 前句の表面に現われただけのものから得た聯想に執着してはいい附句は出来ない。 前句がそれ自身には平凡でも附句がいいと前句がぐっと活きて引立って来る。どんな平凡な句でもその奥底に

文字遣い

新字新仮名

初出

「明星」1927(昭和2)年1月

底本

  • 寺田寅彦全集 第三巻
  • 岩波書店
  • 1997(平成9)年2月5日