しゃくちょうくうにあたふ
釈迢空に与ふ

冒頭文

君が歌百首を發表すると聞いたとき僕は嬉しいと思つた。いよいよ「アララギ」三月號が到來して君の歌を讀んでみて僕は少し殘念である。遠く離れて、君に面と向つて言へないから今夜この手紙を書かうと思つた。 つまり心の持方が少し浮いてゐないか。目が素どほりして行つて居ないか。歌ひたい材料があり餘るほどあつても、棄て去るのが順當だと思はれるのが大分おほい。苦勞して創めた『連作』の意義がだんだん濁つて來

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「アララギ」1918(大正7)年5月

底本

  • 齋藤茂吉全集 第十四卷
  • 岩波書店
  • 1952(昭和27)年7月10日