さっぽろまで
札幌まで

冒頭文

九月二十九日。二時半上野発。九時四十三分仙台着。一泊。翌朝七時八分青森行に乗る。 仙台以北は始めての旅だから、例により陸地測量部二十万分の一の地図を拡げて車窓から沿路の山水の詳細な見学をする。北上川(きたかみがわ)沿岸の平野には稲が一面に実って、もう刈入れるばかりになっているように見える。昨夜仙台の新聞で欠食児童何百という表題の記事を見て来たばかりの眼には、この目前見渡す限りの稲の秋は甚

文字遣い

新字新仮名

初出

「鉄塔」1932(昭和7年)11月

底本

  • 寺田寅彦全集 第四巻
  • 岩波書店
  • 1997(平成9)年3月5日