せいぶつ |
静物 |
冒頭文
一 家を持つて間のない道助夫妻が何かしら退屈を感じ出して、小犬でも飼つて見たらなどと考へてる頃だつた、遠野がお祝ひにと云つて喙(くちばし)の紅い小鳥を使ひの者に持たせて寄来(よこ)してくれた。道助はその籠を縁先に吊しながら、此の友人のことをまだ一度も妻に話してなかつたのを思ひ出した。 「古くからの親友なんだ、好い人だよ。」と彼は妻に云つた。 「では一度お招(よ)びしたらどう。」と彼女
文字遣い
新字旧仮名
初出
「東京朝日新聞」1922(大正11)年11月
底本
- 現代文学大系 64 現代名作集(二)
- 筑摩書房
- 1968(昭和43)年2月10日