いちょう |
公孫樹 |
冒頭文
「この頃の洋式の建築は可笑しなことをするもんだね。砂利を煮て何にするんだろう。」 そう云って、吉住が煙草に火をつけながら立止ったので、私も一緒に立って、やはり煙草に火をつけた。 「まさか砂利だけを煮るつもりでもなかろう。」 だが、実際砂利だけを煮てるのだった。長方形の大きな鉄の釜が二つ並んでいて、一方のには真黒なアスファルトが、一方のには大粒の砂利が、何れも七分目ばかりはいってい
文字遣い
新字新仮名
初出
「改造」1925(大正14)年5月
底本
- 豊島与志雄著作集 第二巻(小説Ⅱ)
- 未来社
- 1965(昭和40)年12月15日