にちりん
日輪

冒頭文

序章 乙女(おとめ)たちの一団は水甕(みずがめ)を頭に載(の)せて、小丘(こやま)の中腹にある泉の傍から、唄(うた)いながら合歓木(ねむ)の林の中に隠れて行った。後の泉を包んだ岩の上には、まだ凋(しお)れぬ太藺(ふとい)の花が、水甕の破片とともに踏みにじられて残っていた。そうして西に傾きかかった太陽は、この小丘の裾(すそ)遠く拡(ひろが)った有明(ありあけ)の入江の上に、長く曲折しつつ逈(は

文字遣い

新字新仮名

初出

「新小説」1923(大正12)年5月号

底本

  • 日輪・春は馬車に乗って 他八篇
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1981(昭和56)年8月17日