せいしゅんろん
青春論

冒頭文

一 わが青春 今が自分の青春だというようなことを僕はまったく自覚した覚えがなくて過してしまった。いつの時が僕の青春であったか。どこにも区切りが見当らぬ。老成せざる者の愚行が青春のしるしだと言うならば、僕は今も尚(なお)青春、恐らく七十になっても青春ではないかと思い、こういう内省というものは決して気持のいいものではない。気負って言えば、文学の精神は永遠に青春であるべきものだ、と力みかえってみた

文字遣い

新字新仮名

初出

「文学界 第九巻第十一号、第十二号」1942(昭和17)年11月1日、12月1日発行

底本

  • 坂口安吾全集14
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1990(平成2)年6月26日