さとうどろぼう |
砂糖泥棒 |
冒頭文
与助の妻は産褥についていた。子供は六ツになる女を頭に二人あった。今度で三人目である。彼はある日砂糖倉に這入(はい)って帆前垂(ほまえだれ)にザラメをすくいこんでいた、ところがそこを主人が見つけた。 主人は、醤油醸造場の門を入って来たところだった。砂糖倉は門を入ってすぐ右側にあった。頑丈な格子戸がそこについていた。主人は細かくて、やかましかった。醤油袋一枚、縄切れ五六尺でさえ、労働者が塵の
文字遣い
新字新仮名
初出
1923(大正12)年12月
底本
- 黒島傳治全集 第一巻
- 筑摩書房
- 1970(昭和45)年4月30日