京一が醤油醸造場へ働きにやられたのは、十六の暮れだった。 節季の金を作るために、父母は毎朝暗いうちから山の樹を伐りに出かけていた。 醸造場では、従兄の仁助(にすけ)が杜氏(とうじ)だった。小さい弟の子守りをしながら留守居をしていた祖母は、恥しがる京一をつれて行って、 「五体もないし、何んちゃ知らんのじゃせに、えいように頼むぞ。」 と、彼女からは、孫にあたある仁助に頭