かがくじょうのこっとうしゅみとおんこちしん |
| 科学上の骨董趣味と温故知新 |
冒頭文
骨董(こっとう)趣味とは主として古美術品の翫賞(がんしょう)に関して現われる一種の不純な趣味であって、純粋な芸術的の趣味とは自ずから区別さるべきものである。古画や器物などに「時」の手が加わって一種の「味」が生じる。あるいは時代の匂というようなものが生じる。またその品物の製作者やその時代に関する歴史的聯想も加わる。あるいは昔の所蔵者が有名な人であった場合にはその人に関する聯想が骨董的の価値を高める事
文字遣い
新字新仮名
初出
「理学界」1919（大正8）年1月
底本
- 寺田寅彦全集 第五巻
- 岩波書店
- 1997（平成9）年4月4日