けっとう
決闘

冒頭文

妙信、京二郎、安川らの一行が特攻基地へ廻されたのは四月の始めであつたが、基地はきゝしにまさる気違ひ騒ぎで、夜毎々々の兵舎、集会所、唄ふ奴、踊る奴、泣く奴、怒る奴、血相変り、殺気だつた馬鹿騒ぎである。真剣をぬいて剣舞のあげくに椅子を真ッ二ツに斬りこむ男、ビールビンをガラス窓に叩きつける男、さうして帰らぬ征途につく。規律などは滅茶々々、酔つたあげく兵舎の窓をとびだして妓楼へ行く奴、町へくりだし情婦の家

文字遣い

新字旧仮名

初出

「社会 第二巻第九号」1947(昭和22)年11月1日

底本

  • 坂口安吾全集 05
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年6月20日