ぼくすいのこんれい
朴水の婚礼

冒頭文

朝巻信助は火星人といふ渾名であつたが、それは頭デッカチで口が小さいといふ意味ながら、顔が似てゐるためではなく、内容的な意味であつた。彼は親友が死んだとき、泣いてゐる奥さんの前で「彼の死は悲しむべく然し、それは目出度いことである。さうでもないか。然し、とにかく——」かう言つて絶句してしまふのであるが、それはつまり彼が平常色々の考へごとをしてゐるからで、死といふことに就いてもかねて色々に考へてゐるから

文字遣い

新字旧仮名

初出

「新女苑 第一〇卷第三号」1946(昭和21)年3月1日

底本

  • 坂口安吾全集 04
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年5月22日