にょたい |
女体 |
冒頭文
岡本は谷村夫妻の絵の先生であつた。元々素行のをさまらぬ人ではあつたが、年と共に放埒はつのる一方で、五十をすぎて狂態であつた。 谷村夫妻の結婚後、岡本は名声も衰へ生活的に谷村にたよることも多かつたので、金銭のこと、隠した女のこと、子供のこと、それまでは知らなかつたり、横から眺めてゐたにすぎないことを、内部に深く厭でも立入らねばならなかつた。 岡本は己れの生活苦が芸術自体の宿命であ
文字遣い
新字旧仮名
初出
「文藝春秋 第二四巻第七号」1946(昭和21)年9月1日
底本
- 坂口安吾全集 04
- 筑摩書房
- 1998(平成10)年5月22日初版第1刷