こいをしにいく(「にょたい」につづく) |
恋をしに行く(「女体」につゞく) |
冒頭文
谷村は駅前まで行つて引返してきた。前もつて藤子にだけ話しておかうと思つたのである。彼は藤子の意見がきゝたかつた。彼は自信がなかつたのだ。そして藤子の口から自信へのいと口をつかみだしたいといふのである。 谷村は信子に愛の告白に行く途中であつた。彼はかねて肉体のない恋がしたいと思つてゐた。たゞ魂だけの、そしてそのために燃え狂ひ、燃え絶ゆるやうな恋がしたいと考へてゐた。そして彼はさういふ時にい
文字遣い
新字旧仮名
初出
「新潮 第四四巻第一号」1947(昭和22)年1月1日
底本
- 坂口安吾全集 04
- 筑摩書房
- 1998(平成10)年5月22日