ぐうたらせんき
ぐうたら戦記

冒頭文

支那事変の起つたとき、私は京都にゐた。翌年の初夏に東京へ戻つてきて、つづいて茨城県利根川べりの取手(とりで)といふ町に住み、寒気に悲鳴をあげて小田原へ移り、留守中に家が洪水に流されて、再び東京へ住むやうになり、冬がきて、泥水にぬれたドテラを小田原のガランドウといふ友人のもとに残してきたのを取りに行つた。翌朝小田原で目をさましたら太平洋戦争が始つてゐたので、田舎の町では昼は電気のこない家が多いのでラ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文化展望 第二巻第七号」三帆書房、1947(昭和22)年1月1日

底本

  • 坂口安吾全集 04
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年5月22日