かみサマをうんだひとびと
神サマを生んだ人々

冒頭文

二号の客引き 大巻(おおまき)博士が途方にくれながら温泉都市の海岸通りを歩いていると、ポンと背中をたたいた者がある。 「大巻先生じゃありませんか」 振向いてみると、五十がらみの宗匠然とした渋いミナリの人物。見たような顔だ。 「どなたでしたかな?」 「芝の安福軒ですよ。それ、戦前まで先生の三軒向う隣りの万国料理安福軒。思いだしたでしょう。終戦後はこの温泉場でその名も同じ安福

文字遣い

新字新仮名

初出

「キング 第二九巻第一一号」1953(昭和28)年9月1日

底本

  • 坂口安吾全集 14
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年6月20日