ちょうないのにてんさい
町内の二天才

冒頭文

魚屋と床屋のケンカのこと その日は魚屋の定休日であった。金サンはうんと朝寝して、隣の床屋へ現れた。 「相変らず、はやらねえな」 お客は一人しかいなかった。源サンはカミソリをとぎながら目玉をむいて、 「何しにきた」 「カミソリが錆びちゃア気の毒だと思ってな。ハサミの使い方を忘れました、なんてえことになると町内の恥だ。なア。毎月の例によって、本日は定休日だから、オレの頭を持っ

文字遣い

新字新仮名

初出

「キング 第二九巻第一四号」1953(昭和28)年12月1日

底本

  • 坂口安吾全集 14
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年6月20日